大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和26年(オ)256号 判決 1953年9月11日

東京都千代田区丸ノ内三丁目二番地

上告人

与志本合資会社

右代表者代表社員

由井定右エ門

右訴訟代理人弁護士

清瀬一郎

島内龍起

広島県比婆郡東城町大字東城一三七番地

被上告人

高坂晃正

右法定代理人親権者母

高坂文子

広島県比婆郡久代村二四七二番地

被上告人補助参加人

旭科学合資会社

右法定代理人代表社員

沢田冨美子

右当事者間の所有権確認妨害排除請求事件について、広島高等裁判所が昭和二六年三月一二日言渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告申立があつた。よつて当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人清瀬一郎、同島内龍起の各上告理由は本判決末尾添付の別紙記載のとおりであり、これに対する当裁判所の判断は次のとおりである。

上告代理人清瀬一郎上告理由第一点について。

権利の発生消滅等具体的法律效果を判断するにつき直接必要な事実(いわゆる直接事実又は主要事実)は、たとえ裁判所に顕著であつても、当事者の主張がない限り、判決の基礎とすることを得ないのは勿論であるけれども、主要事実につき主張がある以上、該事実の存否を推測させるに足る間接的な事実(いわゆる間接事実又は補助事実)の如きは、当事者の陳述がないに拘らず、裁判所においてこれを顕著な事実と認め、主要事実存否判断の資料とすることを妨げないものと解するのが相当である。

本件についてこれを見ると、訴外高坂浪子が本件立木の処分或はその他の事項につき被上告人を代理すべき権限を与えられていたか否かが当事者間に争われている主要事実であつて、原審はこの事実の存否を判断するにあたり、被上告人先代景正の没後間もなく浪子と被上告人等との間に遺産の管理処分権をめぐつて深刻な争を生じ、現に原裁判所にこれに関する訴訟が十数件係属中であること、即ち前述のいわゆる間接事実にあたる事実を原審に顕著な事実であるとした上、これを資料として訴外浪子は前記の代理権を与えられた事実がないと判断したものであることは原判文上明かであるから、右間接事実につき当事者が何等陳述をしていなくても、原判決には所論のような違法があるものではない。論旨引用の各判例はいずれも本件には適切でない。

なお、論旨は、原審が前記事実を顕著な事実と認めたのは錯誤にもとずく旨主張するが、たとえ前記係属事件がすべて昭和二二年四月一八日(高坂浪子と訴外久代村農業会間の本件立木譲渡契約の日)以後提起されたものであるとしても、原審がこれ等事件の審理により、右契約当時における原判示のような事実を職務上知得することはあり得ないことではなく、所論は結局原審の事実認定を非難するに帰着するから、この点に関する論旨も採用し難い。

同第二点について。

民訴二五七条にいわゆる「顕著ナル事実」には、いわゆる公知の事実のほか、当該裁判所にとつて職務上顕著な事実をも含むものであつて、後者は必ずしも一般に了知されていることを要しないと解するのが相当である。

そして、原審が「顕著な事実」と判示したのは、「原審にとつて職務上顕著な事実」の意味であることは判文を通読して容易に了解し得るところであるから、論旨は理由がない。論旨引用の各判例はいずれもいわゆる公知の事実に関するもので、本件には適切でない。

同第三点及び上告代理人島内龍起上告理由第二点について。

民事判決には主文に影響あるべき当事者の主張事実を摘示し、これに対する判断を示すべきは勿論であるが、右事実の摘示は必ずしも当事者の主張するところを逐一掲記しなければならぬものではなく、その要領を摘記すれば足るものと解すべきである。

ところで、所論第一審における上告人の主張と原審におけるそれとは全く同一とは云えないが、高坂浪子が(一)財産税課税価格等の申告(二)財産税物納手続(三)一般公租公課の納付につき夫々被上告人を適法に代理した事実があるという点においては同一に帰着するのであるから、原審が上告人のこの点に関する主張事実を摘記するに当り、第一審判決の事実摘示を引用しても敢て違法とは云い難く、而も原審は右各事実を認め得ないと判断した趣旨であることは原判文に徴しこれを了解するに難くないから、原判決には所論のような違法はない。

上告代理人清瀬一郎上告理由第四点について。

所論の追認及び委任の点については、第一審証人高坂浪子の証言中これに言及した部分があるので、原審において上告人が申出でた所論各証拠は、これ等の点に関する唯一の証拠とは云い得ない。所論はこれと異なる見解に立脚して原判決を論難するもので採用し得ない。

同第五点について。

原判決中当事者欄に「被控訴人高坂正」と表示があることは所論のとおりであるが、原判決摘示事実、理由、その他に徴すれば、右表示は「被控訴人高坂晃正」の誤記であることが明白であつて、民訴一九四条に従い更正を許さるべき場合に該当する。されば、右誤記は原判決破毀の理由とするに足りない。

論旨引用の各判例はいずれも本件の場合に適切ではない。

同第六点について。

原審が論旨引用の如く判示したのは、高坂浪子に対し黙示の代理権授与があつたものとも認められないとした趣旨であることは判文上明かであつて、所論のように、民法一一〇条は明示の授権にもとずく任意代理の場合でなければ適用がないと解した結果、黙示の授権があつたことを認めながら、上告人の抗弁を排斥したものとは到底解し難い。

所論は原判決の趣旨を誤解して、これを非難するものであるから採用し得ない。

上告代理人島内龍起上告理由第一点について。

他人が本人のなすべき公租公課の支払、財産税に関する財産の価格算定申告、財産税の物納等をなし、本人又はその法定代理人がこれを黙視し、異議を述べなかつたからといつて、常に必ずしもその他人に対し暗黙のうちに代理権を授与したものと認めなければならないものではないから、原審が論旨引用のような事情を認定し、右事情のもとでは仮に所論のような黙認又は異議を述べない事実があつたとしても、代理権の授与があつたものと認め得ない旨判示しても、所論のような違法があるものとはいい得ない。

同第三点について。

所論財産税に関する財産の価格算定申告委託の事実につき、原審は「前記各証拠を外にしては之を認むるに足る証拠がない」旨判示しているのであつて、右にいわゆる「前記各証拠」とは、原判決が先に措信できない旨を判示した一審証人高坂浪子(第一、二回)、瀬尾講太郎、池田〓吾の各証言並に甲第十号証、第十一号証の二、三、四、第十二号証、第十六、十七号証の各記載を指すものであること判文上明かである。されば原判決には所論のような判断遺脱はなく、論旨は理由がない。

同第四点について。

原判決は「景正の没後間もなく浪子と被控訴人(被上告人)等との間に遺産につき各自分にその管理処分権があると主張し深刻な争を生じ、現に当裁判所にこれに関する訴訟が十数件係属している」事実が職務上顕著であるとしたものであつて、単に訴訟係属の事実から判示の如き争を推認したものではない。そして、原審が現に係属する訴訟の審理により、該訴訟係属前から右のような争のあつた事実を職務上知得することはあり得ないことではないから、所論の各時期において既に訴訟が係属していたかどうかを明かにしなくても、何等理由に不備があるものではない。

されば、論旨はいずれも理由がない。

同第五点について。

所論(三)のような経験則があるとは認められないから、これを前提とする論旨は採用し難い。

同第六点について。

論旨は結局原審が適法になした事実の認定を非難するに帰着するから採用し得ない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)

昭和二六年(オ)第二五六号

上告人 与志本合資会社

被上告人 高坂晃正

上告代理人弁護士清瀬一郎の上告理由(二六、六、二五付申立により訂正済)

第一点 民事訴訟法第二五七条(旧民事訴訟法第二一八条)に依れば裁判所に於て顕著なる事実は当事者に於て之が挙証を為すことを要しないが、しかし当事者がこれを提出しない以上裁判所は自ら進んで之を裁判の資料に供することを得ないということは大審院以来確立せられたる我民事訴訟法上の著明な裁判例の一である。(明治三十六年(オ)第二八八号同年六月十七日第二民事部判決、大正九年(オ)第二八二号同年六月九日第三民事部判決)。然るに原裁判所は上記判例に違反し、当事者が顕著なる事実として主張せず又提出せざる事実を裁判所に於て顕著なる事実なりとして引照し、これを基礎として重要なる争点の判断を下したる違法の判決である。

本件に於ける上告人会社の訴旨を要約すれば、上告人会社は原判決添附目録記載の山林の上の立木を昭和二十二年六月三日訴外東城木材生産組合から代金二十二万円で買受け現在これを所有して居る。しかるにこれにつき被上告人との間に争を生したからその確認を求めるというのである。

右山林はもと広島県比婆郡久代村訴外亡高坂景正の所有であつたところ昭和十八年七月二十一日同人の死亡により被上告人(景正の指定相続人)がその家督相続を為し右立木の所有権をも承継取得した。被上告人は幼少で親権者母文子と共に高坂家本籍たる比婆郡久代村より数里を距つた同郡東城町に居住していたので、亡景正の遺妻高坂浪子(養母と同様の地位に在る)が遺産を事実上管理していたが、被上告人の納付すべき財産税三十六万円余の資金調達の必要に迫られ昭和二十二年三月四日被上告人の母文子の委託を受けた浪子は重要な親族の同意を得た上、同月十八日前記山林を含む景正の遺産全部を訴外久代村農業会へ売渡担保に供し、同農業会は同年四月十一日右山林の立木のみを前記東城木材生産組合に売渡し上告人会社は同年六月三日之を右組合より買受けその引渡を受けたというのである。

この主張に対し(第一審判決事実摘示より引用)被上告人代理人は第一審に於て、前記昭和二十二年三月十八日係争山林を売渡担保とするに当つて被上告人を代表せせりという高坂浪子には之を為すの権利を有つて居なかつたのであるから同日の被上告人対久代村農業会間の契約は無効であると主張した。上告人代理人は、浪子に其権限があつたと主張すると共に仮定的主張として右浪子は本来或る事項については被上告人の代理人であつたのであるから、縦令二十年三月十八日の久代村農業会との契約がそれ自体権限外であつたとしても同組合代表者が浪子にその権限ありと信ずべき正当の事由があつたのであるから、右契約は有効であると主張し、民法第百十条を援用した。この仮定的事実主張のうち、訴外高坂浪子が或る事項については昭和二十二年三月当時被上告人晃正の代理人であつたということとして控訴審に於て主張したところは次の三件である。(原審昭和二十六年二月十四日の口頭弁論に於て陳述したる同年二月三日附準備書面)

第一、財産税課税価格等の申告を為すの件

理由

浪子は之より先き昭和二十二年二月中独断を以て財産税の課税標準となる価格を算定して庄原税務署へ申告書を作成提出した。一方文子も亦同じく同申告書を提出せしところ浪子の申告額は七十三万円斗りなりしに反し、文子の申告額は百四十数万円に上り非常に開きありしにより同署係官より協議して適当額を申告せよとの注意を受けたるより両者同年三月四日(文子宅)五日(久代農業会)の両日会合協議を凝らしたる結果同年同月六日文子の代理者たる田外均(文子の実父)は浪子が前に提出したる申告書へ連印して提出し曩に文子の提出せし申告書は取下げたるものである。是れ浪子の為したる課税価格申告の代理権を追認したのである。

而かもこのことは同日田外と浪子が同伴して庄原税務署に出頭して同署内の一室に入り親しく協議せし上為したるものであるから民法第百十三条に則り右追認に因り浪子の代理権は完全に効力を有するものである。

第二、財産税の物納許可申請及物納物件納付の件

理由

是復浪子に於て甲第四号証の売渡担保契約に先ち昭和二十二年二月十五日附を以て景正の遺産たる数百筆の不動産中より二百数十筆なる田十九町九反七畝六歩、畑七町六反十六歩を選別して其筋へ物納許可申請を為せしところ其の許可を得て財産税十六万千百四十七円五十銭の物納納付を完了し政府に収納されたのである。

右物納許可申請は前掲同年三月四日文子宅、翌五日久代農業会の会合に引続き三月六日浪子と文子の代人田外均と同伴して庄原税務署へ出頭して課税物件の価格申告を為したる際同署係官より物納許可の申請手続のことを承はり浪子は文子代人田外均より同申請手続を託され三日間の猶予を乞い帰宅して瀬尾講太郎等をして手伝はしめ不動産の中選別し二百数十筆に渉る、字地番、地目、反別、賃貸価格等の明細表を作成し同月九日頃同税務署へ提出せしものにて之には文子と連印せしものであるから(提出は甲第四号証の契約より約十日以前である)物納許可申請は浪子が文子の代理権を有するものである。而して浪子はその許可を得て物納物件の納付手続を完了したり此のことは文子において何等異議なく全面的に認めているのである。

第三、一般の公租公課の代納の件

理由

浪子は夫景正か昭和十八年七月二十一日死亡せし以来は家政全部を双肩に担ひ同年十二月以来昭和二十三年十二月末日迄(その後に及ぶも省略す)の間数年の久しきに亘り高坂家に課せられたる公租公課は総へて調達納付せしものである。被控訴人が納税義務者たるもの(相続税の年賦払等)を含むこと勿論である。

被控訴人は久代村に数多の土地を所有し村内最高の大地主でありながら同村に一切在住せず東城町に常住せるが故に地租法第七十九条及地方税法第三十三条により納税管理人を定め久代村長に届出づべき申告義務あり之を怠れば地租法第八十二条に依る過料の制裁規定すらある強行法規に反し同期間内はその届出を為さず是浪子が代納せる事実を知りつつ之を黙認すればこそ其の届出の必要を感ぜざりしものである。即ち浪子は納税の代理人である。

原審に於ける主なる争点は、(一)昭和二十二年三月十八日当時本籍地に在つて高坂家の孤畳を守つて居つた浪子に財産税上納のための金策を為す権限があつたのであるか、将た無かつたのであるかという事、(二)もし此の事につきては権限がなかつたとしても同人は高坂当主(四歳数ケ月の幼児)の事につき他に代理権を有した事柄があり同人は高坂当主の代理人であつたのではないか。(それならば第三者たる久代村農業会が同人を本件につきても代理人と見たのを正当とすべき幾多の事由がある)の二点である。原判文を茲に引用するの煩を省くが、原判決は、右のうち(一)の事実認定に際して、

「景正の没後間もなく浪子と被控訴人等との間に遺産につき各自分にその管理処分権があると主張し深刻な争を生じ現に当裁判所に之に関する訴訟が十数件係属している顕著な事実によつてみても被控訴人の観権者文子が遺産全部を控訴人主張の如く売渡担保に供することを浪子に委託することは考へられない」。

と言い。

(二)の争点については、

「次に控訴代理人主張の表見代理について按ずるに、たとえ控訴人主張の(1)乃至(3)の事実があつても(これは一審判決の(1)乃至(3)に依つて居るので前記第一乃至第三と相違するが)前認定の如く浪子と被控訴人等間には亡景正の遺産をめぐつて深刻な争があるので、この事情の下に於ては仮りに浪子が控訴人主張の如く公租公課の支払財産税に関する財産の価格算定申告財産税の物納等をし文子がこれを黙認し又は異議を述べなかつたとしても(文子が浪子に財産の価格算定申告を委託した事実は前記各証拠を外にしてはこれを認むるに足る証拠がない)文子が浪子にその代理権を授与したものと認めることもできぬ」。

と説明して居るのである。

要之、原判決は、

「景正の没後(甲第一号証戸籍謄本に依れば同人死亡は昭和十八年七月二十一日)間もなく浪子と被上告人の母文子との間に各自分に管理処分権があると主張し深刻な争を生じ、現に広島高等裁判所に之に関する訴訟が十数件係属して居る事実」

を以て原裁判所に於ける顕著な事実とし前記(一)の事実については之を補強証拠とし前記(二)の争点についてはこれを基礎的証拠として居るのである。

代理人等は実質的に原審の顕著事実の認定は錯誤であると確信して居る景正没後間もなく(少くも昭和二十二年三月前)浪子対農業会契約前高坂家財産管理処分権に関する深刻な争があつたというのは事実に反する深刻な争が生じたのは本件契約以後の事である。又本件原審口頭弁論終結当時広島高等裁判所に〓属して居つた訴訟で昭和二十二年三月十八日以前に第一審裁判所に提出せられたものは一件もない、而もこれは浪子、文子の管理権には関係がない。言うまでもなく二十二年四月以後の訴訟は本件に於ける浪子の権限判定に関係はない但当今施行せられている昭和二十五年法律第一三八号の関係もあることなればこの点については輙く論せぬ又裁判官にだけ知られ一般人に顕著であつたか否かを顧みないのは訴訟法に所謂顕著事由の解釈に関する判例に違反している。此点は次項に別異の論点として主張する。只茲に上告理由第一点として特に貴庁の御着眼を乞いたきは被上告人は控訴審に於ては終始欠席のままであつて以上のこを顕著事由として採用せられんことを申出でたことの無いという点である。只昭和二十六年二月六日附を以て「答弁書」なるものを提出して居るがこれは法廷に於て陳述せられて居らぬ。而もその内容は、

「一、第一審判決摘示事実の通り

一、原審(勿論第一審をいう)に於ける被控訴人提出の証拠を援用する」

というのみ。広島高等裁判所に於ける顕著な事実として景正没後間もなく財産処分権に関する深刻な争があつた事を提供申述し、又これに関する訴訟(景正没後間なき争を原因とする訴訟)が広島高等裁判所に十数件〓属することを顕著なる事実として提出顕著事実として立証を省き証拠として採納せられたき旨の提供を為した形跡は曾て存在しないのである。原裁判所は当事者の顕著事実としての提供と援用とを待たずして、進んで自ら之を訴訟資料と為したる点に於て明かに我国従前の判例に違反するものである。原判決は此点よりして必ず破棄せらるべきものである。

第二点 民事訴訟法に於て裁判所に顕著なる事実というは「当該裁判官が十分知了せる事実」というが如き主観的の意味ではない。世間一般又は少くとも一地方に於て其の存在の確実なることにつき何人も疑を挾まざる程度に一般に知了せられ又は一般に認識せられたりと(即ち客観的の存在を)裁判所が認めるものを言うのである。大審院大正九年(れ)第九四一号、同十年一月二十七日第二民事部判決に於て「或事実が裁判所に顕著なるや否やは各個の具体的の場合に於て裁判所之を判断すべく、一般的に定むことを得ずと雖も、例えば或事実が一地方に於て其存在の確実なることにつき毫も疑を挾まざる程度に一般人に知了せられ又は一般に認識せらるるときは縦令裁判官が職務外に於て之を認識了知したる場合と雖も尚これを以て裁判所に顕著なる事実なりと判示することを妨げざるものとす」と言いたるは顕著なる事実というには裁判官自身の知不知の浅深のみを標準として之をいうに非ずして、そのことが一般又は一地方に熟知せらるるや否やを本件とするものなることを明示して居るものである。

((附記す。英米法に於て裁判所に認識せらるる事実(ヂユデイシアル・ノウチス)というは訴訟法にいう顕著事実と同様なる観念である。英米証拠法に於ても事物の性質(例えばガソリンは爆発する性質を有することと)。自然の法則(某日に於ける日出、日没の時刻)。科学的事実(例えば音の速度)。地理的事実。歴史的事実。言語の意味。重量。寸法等を言い裁判官が個人的に了知するという主観的意味には解されて居らず又取扱われて居らぬ。単に裁判官が個人的に知ることを顕著事由とするということは証拠裁判の根底を動かすからである。))。

然るに原判決が現に広島高等裁判所に高坂浪子と被控訴人(被控訴人の親権者文子の意味なるべし)との間に各自分に管理権ありとの訴訟が十数件係属し居ることを顕著なる事実と判示したるは右大審院判例中に含まれたる顕著事実の本質に関する解釈を誤まり裁判官が了知せる事(主観的)は総て顕著事実なりと為したるものと解するの外はない。何となれば一般人は広島高等裁判所に如何なる事件が繋属するか、又その性質が或る財産権の管理権に関する訴であるか否かの如きを知り得る筈がない。或る事項が顕著に一般に知られて居るか否かはもとより裁判所の事実認定権限内であろうが、茲に言わんとするところは之とは異り訴訟法上顕著事実とは如何なる性質の事実であるかであつて、これは法律解釈問題である。而して其の解釈は冒頭に掲記した大審院判例に於て既に説示せられている。

本件は或る事実が顕著であるか否かという事実認定を誤りたりと批難するよりも、寧ろ訴訟法上の顕著事実とは裁判官其人によく知了された事物という意味であるか(主観的)、世間一般的に疑なきまでに認識せられた事物という意味であるか、(客観的)の限界、区分に関する解釈問題である。原判決は此点に於て大審院以来の判例に反するものである。この理由よりするも原判決は必ず破棄せられねばならぬ判決である。

第三点 凡そ民事の判決には、その判決の主文に影響ある以上は当事者の事実上の主張を摘示し且之に対する合理的判断を加うることを要すと為すは大審院以来公示せられたる顕著なる判例である。(例えば大正六年(オ)第三四〇号、同年十二月十九日第三民事部判決。大正十年(オ)第二五号、同年二月二十二日第一民事部判決、同判決理由に引用の大正六年(オ)第三九四号、同年六月四日判決等)。

本件に於て上告人は、本上告理由書第一点に説明の争点中に引用した如く高坂浪子が或る事項につきては晃正の代理人たりしとして第一乃至第三の事由を主張した。本年二月十四日の口頭弁論に於て引用した本年二月三日附「準備書面(代理権存在)」と題する書面の記載が是れである。(記録五〇八丁以下)。

右第一乃至第三の事由は第一審判決事実摘示中の原告仮定主張(一)の内(1)乃至(3)を改めたものである。此の変更については、その書面が相手方に送達せられて後相手方欠席のため之に異議なかりしものと認めらるべきものであるから、訴訟法上これを基準として審理せらるべきは当然である。然るに原判決は毫も之を省みず判決事実摘示に於ては、

「当事者双方事実の主張は控訴代理人の為した原審(第一審)口頭弁論の結果の陳述に依ると原判決摘示事実と同一であるから茲に之を引用す」。

とのみ記述し、裁判所の判断理由を示したる部分に於ては、たとえ控訴人主張の(1)乃至(3)の事実があつても、浪子と被控訴人等間には亡景正の遺産をめぐつて深刻な争があり、広島高等裁判所に十数件の訴訟が繋属して居つた事実よりすれば浪子が公租公課の支払、財産税に関する財産価額算定申告、財産税の物納等をし、文子がこれを黙認し又は異議を述べなかつたとしても、文子がその代理権を浪子に授与したと認めることが出来ぬといつて居る。

第一審の(1)乃至(3)がその儘控訴審に於ける上告代理人の主張であつたとするならば黙認又は異議不申立の效果を判定したことに依り或は裁判の理由は一応具備したということも出来よう。しかし控訴審に於ける第一乃至第三の事由は必ずしも黙認又は異議不申立という消極的事実又は解釈的授権を主張して居るのではない例えば前記準備書面の第一に於ては昭和二十二年三月四日文子宅に方て同月五日久代農業会に於て浪子と文子の父で同人の代表者である田外均が浪子の前に提出して居つた申告書に連印して浪子の代理権を追認するの積極行為を為したと述べて居る。又右準備書面の第二に於ては浪子は昭和二十二年三月六日浪子と田外とが庄原税務署出頭以後に於て田外均即ち文子の父にして同人を代表する者は物納許可申請のことを浪子に託し浪子は三日間の猶予を乞い瀬尾等の手伝を以て二百数十筆の地番、地目、反別、賃貸価格明細表を作り同月九日文子に代り(文子は之に連印)之を税務署に提出した。即ち物納許可申請の代理行為を委任せられたことを述べて居るのである。斯くの如く控訴審に於て文子が浪子の代理行為を黙認したとか、之に異議を述べなかつたとかいう如き消極的の事実主張ではなく積極的の授権行為を陳述して居る。然るに原審は毫末も之に注意を払わず第一審の(1)、(2)、(3)を判断し第二審に於ける有效な主張を顧みて居らぬ。斯の如きは明かに前記大審院以来の判例の主旨を無視するものであつて原判決は此の点よりするも必ず破棄せられねばならぬ。

第四点 民事の訴訟に於ける証拠調の限度は裁判所の裁量し得るところであるが、ある争点に対する唯一の証拠の申請あるに拘らず判決に必要なしとして之を杜絶しながらその立証なしとして申請者に不利益の裁判を為すことの違法なることは遠く大審院明治三十年第二六七号明治三十一年二月二十四日第一民事部判決、明治四十一年(ク)第六七号明治四十一年六月十六日第一民事部判決以来我国裁判例として踏襲せられるところであつて、この原則は苟くも事実の認定は証拠に基くべきものと為す裁判制度に於ける当然の基本原則でなければならなぬ。本件に於て表見代理の前提条件である代行者(浪子)が何事かの事務処理につき本人(晃正)の代理人であつたか否かについては上告人会社は前論点に引用した如く控訴審に於て始めて、(1)昭和二十二年三月文子宅に於て文子を代表する父田外均より財産税申告事務の代理人としての追認を得た。(2)同年三月六日以後に於ては財産税物納処理につき代理行為を委任せられた等の積極的委託行為に関する事実主張をした。此事実主張たるや本件控訴を為す動機の主要なるものであつて、控訴状にも之を記載し、準備書面(昭和二十六年三月三日附)にも之を反覆力説して居る。即ち一審に於ける黙認とか異議不申立の引用とかは全く異つた有力主張である。

而して控訴代理人は之を立証するため再度に亘り証拠申請を為して居るのである。昭和二十五年十一月三十日の口頭弁論に於ける文書送附申立証人山田光彌高坂浪子の喚問申請昭和二十六年二月十四日口頭弁論に於ける証人石岡茂美及び高坂浪子の申請是れである。是れ等の申請は皆この控訴審に於ける新主張を立証せんとするのである。殊に浪子の尋問に至つては同人が前記代理権の追認又は直接委任を受けたりや否やに関係して居る。殊に第一回申請の尋問事項書中には、

「証人が物納手続することは文子より委託を受けたりや」

との条項あり、第二回の尋問事項書中には

「証人は田外均と同許可申請(物納)の書類作成提出方につき相談せしや、証人に於て其労に当ることと打合せ為せしや、田外も同意せしや」

の条項あり、前記控訴審の新主張を立証せんとしたるや極めて明白である。然るに原審昭和二十六年二月十四日の口頭弁論に於ては、原裁判所は此等申請にかかる証拠は総て之を調べぬ事とするといつて却下し、而も判決に於ては浪子の代理人たりし事を否認する裁判を為して居る。

原裁判所は自ら直接訊問を為さざる高坂浪子の第一審法廷に於ける証言を『たやすく措信出来ない』との辞柄の下に排斥して居る。原裁判所は或は控訴代理人の新事実に関し同証人を呼び出し尋問するも、やはり結局『たやすく信用出来ない』ということに終るであろうから、そんな無駄を省略すべしとの評議であつたかも判らぬ。もし左様であつたら、それは既に裁判に関する初歩の原則を誤つたものである。乃ち証言を聴かざる前に之を信用するや否やを定めたものである。或は原裁判所が顕著であるという他件で何にか気に障つたことでもあつたのか、其の間の消息は第三者たる与志本合資会社には少しも判らぬ。もし他件の心持を本件に移されるようなことがあつたとすれば、これは与志本合資会社としては迷惑至極である。是亦今日の裁判の基本原則に反する。

結局原判決は冒頭に引用したる大審院以来の我国裁判例に違反するものとして之を破棄せられ、上告人をして更に本件の当事者間の問題として確定せられ得べき実体的事実認定に基く公正なる裁判を受くるの機会を与えられたく実に翼望に堪えぬ。

以上

昭和二六年(オ)第二五六号

上告人 与志本合資会社

被上告人 高坂晃正

上告代理人弁護士清瀬一郎の上告理由追加申立

第五点 大審院大正七年(オ)第一〇四七号同八年三月四日第一民事部判決は民訴判決の当事者の表示としては身分、職業を表示するを要せざれども当事者の何人なるやは疑なき程度に表示するを要する旨を判示した。又大正八年(オ)第五六九号同年九月四日第二民事部判決は「判決書に当事者の住所を掲げしむる所以のものは、其人違なきことを確保せしめんが為めに外ならざれば表示せられたる当事者の別人に非ざることを認識し得べく此点に争なき以上は縦令其住所の記載に偶々真実に一致せざるものありとするも此一事を以て民事訴訟法第二百三十六条(旧法)に違反する不法ありと為すを得ず」と判示して居る。右等判決は直接には当事者の身分、職業又は住所の表示に関するものではあるが其の判文中当事者其者の何人なるやに付きては疑なき迄に正しく表示せざるべからざることに言及して居る。蓋民事判決はこれに表示せられたる当事者其人を標準として確定力及び執行力を生ずるからである。従つて控訴審判決に第一審以来争を為し来つた者と異る当事者を記載し又は当事者氏名中に文字の遺脱ありて当事者が何人であるかを其の判決の記載のみに依りては疑なき迄に正確なりと言い得ないときは、其の判決は現行民事訴訟法第百九十一条の要件を缺くものといはなければならぬ。此の解釈は貴裁判所が最近昭和二十五年(れ)第一二八七号事件に於て公示送達の方法として官報に掲載せられた第一回公判期日の召喚状に「来海宏一路」を「海宏一路」と表示せられたるを不適法なりと判決せられたる解釈と相調和するものである。本件記録を調査するに被告は「高坂晃正」であつた。然るに原判決には之を「高坂正」と表示して居る。「正」という名は国内に非常に多きのみならず、殊に本件の争に関係ある広島県比婆郡の高坂家には「景正」「昭正」「和正」等正字を附したる名を用いたる者は頗る多い。斯かる状況の下に於て原判決が被告を「高坂正」と表示したる大審院以来の解釈に依るも判決上に当事者の氏名を別人と区別するため疑なき程度に正確に表示せざりしものである。原判決は此の瑕疵よりするもよろしく破棄せらるべきものである。

以上

昭和二六年(オ)第二五六号

上告人 与志本合資会社

被上告人 高坂晃正

上告代理人清瀬一郎の上告理再追加申立

第六点 原判決は民法第百十条の解釈及適用に関し重大なる誤を犯したる違法の判決である。民法第百十条に於ては「代理人カ其権限外ノ行為ヲ為シタル場合ニ於テ第三者カ其権限アリト信スヘキ正当ノ理由ヲ有セシトキハ前条ノ規定ヲ準用ス」と在る。

本条の首に代理人がと云い、その代理権の因て来るところを制限して居らぬ。法律行為に因る代理人につき本条が適用せらるると同様に、法律の規定の結果或者が代理権を有する場合にも適用せられる。(大審院昭和六年(オ)第三一四五号事件に於ては妻が財産を有するときは夫は或る範囲に於て代理権を有すとして、かかる場合の夫の行為につき本条を適用して居る)。また法律行為に因る代理人のうちにも明示の授権行為に因る代理人であろうが黙示の意思表示の為めに生じた代理人であろうが区別せらるることなく均しく本件は適用せらるるものと解するが本条の正解であると考える。

然るに原審は本条を極めて挾く解し明示の委託又は授権に因る代理人の場合でなければ本条の適用がないものと解して居るのである。

原判決はその理由中の最重要部分に於て次の如く陳べて居る。

「仮りに浪子が控訴人主張の如く公租公課の支払、財産税に関する財産の価額算定申告、財産税の物納等をし文子がこれを黙認し又は異議を述べなかつたとしても(文子が浪子に財産の価額算定申告を委託した事実は前記各証拠を外にしてはこれを認むるに足る証拠がない)文子が浪子にその代理権を授与したものと認めることもできぬ。また浪子が文子の代理人であつたことを示すものがない」

と言い、此の理由を以て本件に於ける浪子が晃正に代りて為した行為につき民法第百十条を適用する事を拒んで居るのである。しかし前記判文中の各行為中他の事は暫く措くとするも彼の「財産税に関する財産の価格算定申告」ということは、財産所有者本人か又は代理人でなければこれを為すことが出来ぬ(財産税法第三十七条参照)

又物納も代理権がある者がせねば無効である。(財産税法第五十六条)。本人高坂晃正は幼少であるから必ずその親権者又は親権者の代理人が之をせねばならぬ。而して原審に於ける控訴人の主張に依れば高坂浪子は親権者(文子)の代理人としてこの申告を為し又物納をも実行したというのである。もし親権者文子(又は其代理人たる父田外均)が本当に之を黙認したとするならば浪子は少くとも右財産税価格申告又物納不動産の政府えの提供については晃正の代理人であると言はなければならぬ。(註、実際に文子も田外もこの申告並に物納を委任し浪子のしてくれたことに依り納税は済んだものとして此の状態の利益を受けて居るから黙認以上のものであるが、原判決が「黙認し又は異議を述べなかつたとしても」というが故に、本上告理由に於ては特に其内黙認の事実を仮定して論ずるのである)。

然るに原判決はかかる場合には民法第百十条の適用を見るべき代理人関係は成立せずと誤解し一方に於て浪子が晃正、文子を代理して申告したという価格算定申告書並に物納記録を取寄せ調査することさえ之を遮り、明示の授権なしとの一事に固着し民法第百十条の適用を否定し第三者たる上告人に不利な判決を為したのは冒頭掲記の如く前記民法規定の解釈を誤つたものである。

因に記す。本件売渡担保は浪子の右申告にかかる財産税の納税財源を得るためであつたのであるから浪子に申告の代理権ありしことが証明せらるる場合には、他人より見れば其財源造成にも代理権ありと推すべき正当の理由があつた場合に該当し得るのである。原判決の解釈は法学上の重要問題の解釈に関すると共に本件の判断についても基本的の関係を有するものである。

以上

昭和二六年(オ)第二五六号

所有権確認妨害排除請求事件

上告理由書

上告人 与志本合資会社

被上告人 高坂晃正

上告代理人島内龍起の上告理由

第一点 原判決には重大な法律の誤解乃至経験の法則違反の違法がある。

一、亡高坂景正の遺妻浪子は、景正の家督相続人たる被上告人(被控訴人)の財産税三十六万円余を調達のため、本件山林等を訴外久代村農業会へ売却するについて、被上告人の表見代理人たるの関係に在つたから、この山林の立木を転買した上告人(控訴人)は正当な所有権者であるとの上告人の主張に対し、原判決は

「浪子と被控訴人等間には亡景正の遺産をめぐつて深刻な争があるのでこの事情の下に於ては仮に浪子が控訴人主張の如く公租公課の支払、財産税に関する財産の価格算定申告、財産税の物納等をし(被上告人後見人母)文子がこれを黙認し又は異議を述べなかつたとしても文子が浪子にその代理権を授与したものと認めることもできぬ」

と判示、引いて上告人の民法第百十条表見代理に関する主張を斥けた。

二しかし二十余年の長きに亘つて亡景正に連添つて来た遺妻浪子と景正の遺言による家督相続人(遺言の趣旨は実は養子縁組であつたのを戸籍上は指定相続人として届出られた)被上告人晃正の実母法定代理人文子との間に景正の遺産をめぐつて深刻な争があるにしても、他方、浪子が被上告人晃正のため、公租公課一切の支払をして来、又財産税に関する財産の価格算定申告、財産税の物納(田畑二十七町余歩)等重大な対外的行為をなすに際し、文子がこれを黙認し又は異議を述べなかつたという事実の存在が認められるとすれば、少くともこれ等の関係に於ては浪子は代理権を授与されてゐたものと判定さるべきであつた。蓋し代理権の授与は必ずしも明示的なるを要せず、暗黙の意思表示即ち黙認によつても可能であるからである。それにも拘らず、原判決が之と全く相反する判定をしたことは、明かに代理権授与に関する法律を誤解したもの、又は少くとも経験の法則に違反するものであつて、斯くして上告人の請求を棄却した原判決は破毀さるべきである。

第二点 原判決には判決に影響を及ぼすべき重要な事項について判断を遺脱した違法がある。

一、上告人は原審に於て、亡高坂景正の遺妻浪子は景正の家督相続人たる被上告人の財産税三十六万円余を調達のため本件山林等を訴外久代村農業会へ売却するについて、被上告人の表見代理人たるの関係に在つたから此山林の立木を転買した上告人は正当な所有権者であるとの民法第百十条表見代理主張の基礎事実として昭和二十六年二月十四日の口頭弁論に於て、同月三日附準備書面に基き左の事実を主張した。(五三一丁、五〇九丁)

「財産税の物納許可申請及物納物件納付の件

浪子に於て景正の遺産たる数百筆の不動産中より二百数十筆なる田十九町九反七畝六歩、畑七町六反十六歩を選別して財産税十六万千百四十七円五十銭の物納を完了した

右物納許可申請は同年三月六日浪子と文子の代理人田外均と同伴して庄原税務署へ出頭して課税物件の価格申告を為した際、同署係官より物納許可申請手続のことを承り、浪子は文子代人田外均より同申請手続を托され帰宅して瀬尾講太郎等を手伝はしめ不動産の中選別し明細表を作成し同月九日頃同税務署へ提出せしもの

而して浪子はその許可を得て物納物件の納付手続を完了した」

二、然るに原判決は右上告人の重大なる主張事実を判決中に摘示せず、之に対する判断を遺脱したまま、浪子は被上告人より代理権を授与された事実等しと判示し、依つて以て上告人の表見代理に関する主張を排斥、上告人の請求を棄却した。原判決は宜しく破毀さるべきである。

第三点 原判決には判決に影響を及ぼすべき重要な事項について判断を遺脱した違法がある。

一、上告人は原審に於て、亡高坂景正の遺妻浪子は景正の家督相続人たる被上告人の財産税三十六万円余を調達のため本件山林等を訴外久代村農業会へ売却するについて、被上告人の表見代理人たるの関係に在つたから此山林の立木を転買した上告人は正当な所有権者であるとの民法第百十条表見代理主張の基礎として、被上告人の財産税課税標準たる財産の価格算定申告方について被上告人の法定代理人実母文子がこれを浪子に委託した事実に基く或る程度の代理権の存在を主張したことは原判決事実摘示によつて明かである。

二、然るに此上告人の主張事項について、原判決は単に「仮に浪子が控訴人主張の如く……財産税に関する財産の価額算定申告……をし文子がこれを黙認し又は異議を述べなかつたとしても」と判示し又「文子が浪子に財産の価格算定申告を委託した事実は前記各証拠を外にしては之を認むるに足る証拠がない」と判示したのみで、「浪子と被控訴人等間には亡景正の遺産をめぐつて深刻な争があるのでこの事情の下においては……文子が浪子にその代理権を授与したものと認めることもできぬ」と上告人の主張を排斥した。

三、然らば原判決は、文子は浪子に対し財産税に関し財産の価格算定申告方を依託したとの上告人の重要な主張事項に対する判断を遺脱し却て当事者の主張せざる黙認又は異議不申立に言及し、而して上告人の請求を棄却したもので、破毀さるべきである。

第四点 原判決には判決に影響を及ぼすべき事実を証拠によらずして認定した違法がある。

一、上告人は原審に於て、亡高坂景正の遺妻浪子は景正の家督相続人たる被上告人の財産税三十六万円余を調達のため本件山林等を訴外久代村農業会へ売却するについて被上告人の正当な代理人若くは表見代理人たるの関係に在つたから此山林の立木を転買した上告人は正当な所有権者であると主張した。

二、之に対し原判決は

(イ) 「景正の没後間もなく浪子と被控訴人等との間に遺産につき各自分にその管理処分権があると主張し深刻な争を生じ現に当裁判所にこれに関する訴訟が十数件係属している顕著な事由によつてみても被控訴人の親権者文子が遺産全部を控訴人主張の如く売渡担保に供することを浪子に委託することは考へられない」

と判示して、浪子に遺産処分の代理権があつたとする上告人の主張を斥けると共に、又

(ロ) 「仮りに浪子が控訴人主張の如く公租公課の支払、財産税に関する財産の価格算定申告、財産税の物納等をし(被控訴人の法定代理人)文子がこれを黙認し又異議を述べなかつたとしても」「前認定の如く浪子と被控訴人等間には亡景正の遺産をめぐつて深刻な争があるのでこの事情の下に於ては……文子が浪子にその代理権を授与したものと認めることもできぬ」と判示、引いて上告人の表見代理の主張をも斥けた。

三、右原判決判断の方向を決定した根本的な原因は「景正の没後間もなく浪子と被控訴人等との間に遺産につき各自分にその管理処分権があると主張し深刻な争を生じてゐる」といふ事実認定に在ること判文上疑がないが、原判決は如何なる証拠に基いて之を認定したかを明かにしてゐない。即ち原判決は証拠に依らずして判決に影響を及ぼすべき重大な事実を認定してゐるのであり、加之景正の没後間もなく遺産をめぐつて管理処分権についての争を生じたといふことは事実にも反する。

四、原判示のように、原審裁判所に浪子と被控訴人等との間に遺産をめぐる訴訟が十数件係属しており、それが仮に原審裁判所に顕著な事実であるとしても、それは単に原審裁判所に其種の訴訟が十数件係属しておるといふ事実認定に立証を要せぬといふだけのことで、「景正の没後間もなく浪子と被控訴人等の間に遺産につき各自分にその管理処分権があると主張し深刻な争を生じた」といふが如き事実までも証拠によらずして認定し得るという筋合のものではない。若し同一当事者の訴訟が十数件裁判所に係属することによつて、斯くの如き事実をも当事者の立証なくして判決に認定せられ得るとすれば、結局は同一当事者の訴訟が多数係属した後に提起せられる訴訟には総て立証は不要で裁判官は「顕著なる事実」の名に於て一切の判断を為し得ることとなり、公平な証拠裁判の本質は失れるであろう。

五、原判決は「現に当裁判所にこれに関する訴訟が十数件係属している顕著な事実によつてみても被控訴人の親権者文子が遺産全部を売渡担保に供することを浪子に委託することは考へられない」とか「この事情の下に於ては仮りに浪子が控訴人主張の如く公租公課の支払、財産税に関する財産の価格算定申告、財産税の物納等をし文子がこれを黙認し又は異議を述べなかつたとしても文子が浪子にその代理権を授与したものと認めることもできぬ」とか判示してゐる。

右原判決は、浪子が財産税額調達のため遺産を売渡担保に供する際、或は浪子が被上告人の公租公課を支払つた際財産の価格算定申告をした際、又財産税の物納をした際、遺産をめぐつて訴訟が十数件係属してゐたかどうかの点を明白にしてゐない。此の点において原判決には理由不備の違法がある。若し右原判決の趣旨にして此等の際、訴訟が十数件係属しておつたといふに在るならば、それは既述のように証拠に依らざる重大事実の認定であるのみならず、最も甚しく事実に反する認定である。

六、いづれにしても原判決は証拠によらずして判決に影響を及ぼすべき事実を認定しておる点において破毀さるべきである。

第五点 原判決には原則的に普遍妥当的な経験を無視した違法がある。

一、上告人は原審に於て、亡高坂景正の遺妻浪子は景正の家督相続人たる被上告人の財産税三十六万円余を調達のため本件山林等を訴外久代村農業会へ売却するについて被上告人の正当な代理人若くは表見代理人たるの関係に在つたから此山林の立木を転買した上告人は正当な所有権者であると主張した。

二、之に対し原判決は

(イ) 「景正の没後間もなく浪子と被控訴人等との間に遺産につき各自分にその管理処分権があると主張し深刻な争を生じ現に当裁判所にこれに関する訴訟が十数件係属している顕著な事由によつてみても被控訴人の親権者文子が遺産全部を控訴人主張の如く売渡担保に供することを浪子に委託することは考へられない」

と判示して、浪子に遺産処分の代理権があつたとする上告人の主張を斥けると共に又

(ロ) 「仮に浪子が控訴人主張の如く公租公課の支払、財産税に関する財産の価額算定申告、財産税の物納等をし(被控訴人の法定代理人)文子がこれを黙認し又異議を述べなかつたとしても」

「前認定の如く浪子と被控訴人等間には亡景正の遺産をめぐつて深刻な争があるのでこの事情の下に於ては……文子が浪子にその代理権を授与したものと認めることもできぬ」

と判示、引いて上告人の表見代理の主張をも斥けた。

三、しかし判示のように文子と浪子との間に景正の遺産をめぐつて深刻な争があつたとしても、それは高坂家の内部における争に過ぎぬ。対外部的な公租公課の問題、殊に差迫つた財産税納付といふが如き未曾有の問題が起つたような場合には、それは係争両当事者浪子も文子も利益を共通にする死活的重大問題である所から、斯様な場合には両者互に暫時争を収めて、対外的に住々協同の戦線に立つことのあるは原則的に普遍的な経験の法則である。

四、然るに原判決は大は国際間の争に、小は個人、婦女子間の争に至るまで、その可能性に関し普遍的に妥当すべき此原則的な経験の法則に些かの顧慮をも払ふことなく、完全に之を無視して、文子と浪子との間に遺産争があるからには、この遺産についての公租公課乃至巨額の財産税納付といふ両者共通の死活的重大問題が起つても両者が此点についてすら協議する筈がないといふ独断的見解を固執し、専ら此独断的見解に拠つて

(一) 財産調達のため本件山林の立木処分について浪子に正当な代理権が与へられてゐた旨の上告人の主張は固より

(二) 右について浪子は表見代理人の関係に在つたとの民法第百十条に依る上告人主張の基礎としての、浪子に或程度の代理権が授与されてゐたことを示すための、

「1、浪子は亡夫景正死亡後数十回に亘り公租公課を支払つて来たのにこれを黙認していたことは文子は浪子に代理権を授与していたものである

2、財産税中十六万余円は遺産中の田畑三百余筆二十七町余歩を物納したのに文子は何等の異議を唱へないでこれを承認しており

3、財産税課税標準たる財産の価格算定申告方について文子がこれを浪子に委託した事実は浪子が被上告人の代理人であつたことを示すものである」

等の前記普遍的な原則的経験の法則に適合し、且本件に具体的に正当な上告人の原審に於ける主張並に之が現実な多数証拠(第六点の申述御参照)を、前記独断的見解に拠るの外他に拠るべき理由なくして一蹴し去り、依て上告人の請求を斥けた。此事たるや一に原審が自己の独断的見地に立脚して原則的に普遍的な経験の法則を無視した違法の結果に外ならない。そうして此違法は原判決判文上明白であるから、原判決は破毀を免れることが出来ぬ。

以上

昭和二六年(オ)第二五六号

上告人 与志本合資会社

被上告人 高坂晃正

上告代理人島内龍起上告理由書(追加分)

第六点 原判決は採証の法則乃至経験の法則に違反してゐる。

一、亡高坂景正に二十余年連添つて来た遺妻浪子は、景正の遺言による家督相続人(遺言の趣旨は養子縁組であつたのを戸籍上指定相続人として届出られた)被上告人の財産税三十六万円余を調達のため、本件山林等を訴外久代村農業会へ売却するについて、被上告人の表見代理人たるの関係に在つたから、其山林の立木を転買した上告人は正当な所有権者であるとの上告人の主張に対し、原判決は

「浪子と被控訴人等間には亡景正の遺産をめぐつて深刻な争があるのでこの事情の下に於ては仮りに浪子が訴訟人主張の如く公租公課の支払、財産税に関する財産の価格算定申告、財産税の物納等をし(被上告人後見人母)文子がこれを黙認し又は異議を述べなかつたとしても文子が浪子にその代理権を授与したものと認めることもできぬ」「浪子は何等代理権を有していなかつたものであるから……表見代理に関する民法第百十条が適用されることはない」と判示、上告人の主張を斥けた。

二、しかし原判決摘示の後記諸証拠を検討するに、之に正当な採証の法則乃至経験の法則を適用して導出される論理的結論として、少くとも原判決は

「浪子は被上告人の公租公課の納付に関して、又財産税納付の際の財産の価格算定申告、物納等に関して、被上告人の法定代理人たる文子より明示的に又は暗黙の裡に代理権を与へられてゐた」

と判示せらるべきであり、かくして上告人の表見代理の主張を容認せらるべきであつた。然るに原判決は之と全く反対の結論を導出して上告人の主張を排斥した。原判決は採証の法則乃至経験の法則に違反するもので破毀を免れぬと信ずる。

三、上告人が言及する原判決摘示の諸証拠の要点は左の通りである。

(イ) 昭和二十三年七月二十八日の証人瀬尾講太郎(久代村農業会長)の調書中左の供述記載(六二丁裏以下)「昭和二十二年三月四日証人は池田弁護士及び浪子の三人で庄原税務署へ行くと署長が高坂家からは同じ様な申告(財産税申告)が二つ出ている。そして其の額が違うから文子と協議の上何とかせよとの話があつたので帰途午後四時半頃文子方へ三人で寄り浪子から税務署長から話があつたことを伝へると先方は文子、田外均(文子の実父)、岡正人(後見監督人)、佐藤天流子が居り、田外均が取敢へず明日久代村農業会へ行くから万事任す宜敷く頼むと言いました……翌三月五日久代村農業会に於て証人、浪子、池田弁護士、伊藤四郎が居る所へ文子の代理人として田外均が来てどんな風にして納税するかと尋ね浪子はそれは景正の遺産である山林等を売つて払はねばいけないと言うと田外もそうですと言いそれから計算しようと言う場合になつて田外が急に腹痛を起した為め話が出来ず明日税務署へ行つて計算しようという事になつて別れました。翌六日庄原税務署へ証人と浪子と池田弁護士、文子の代理人田外均が集り池田弁護士は署長に挨拶だけして直ぐ帰り残りの三人が別室で計算をしました。其の結果納税義務者は高坂浪子として七十三万円ばかりの申告をし文子も名前を書添へました……其後前述の如く売渡担保契約ができて更に久代村農業会はその山林の原木を東城木材生産組合へ二十万円で売却しました。その事については税金で金がいるのだからということで浪子の承諾も得ている訳であります」

(ロ) 昭和二十三年九月二十一日の証人池田〓吾(弁護士)の調書中左の供述記載(一四三丁以下)

「財産税の申告をしなければならぬことになつたので浪子は財産六十五万円と見積つて庄原税務署へ提出した六十五万円は相続当時六十一万五千円の決定があつたので六十五万円と見積つたのです。ところが文子の方からも後見人として百四十万円の申告をしたので百四十万円とすれば税額百万円からになるので浪子としても困るから税務署へ昭和二十二年三月四日瀬尾講太郎と浪子が同道して行つて事情を話すと税務署は浪子の方と文子の方と何方か一方にせよと言うので帰りに証人も浪子、瀬尾等と同道して文子の方へ寄りました。

丁度その日文子方へは後見監督人其他親族の人も居つたので其の場で浪子が百四十万円では困るから文子の方は取下げてくれと言うと後見監督人等がそれでは浪子に任せよと言い計数を合せる為に翌五日久代農業会へ文子に来て貰うことにして帰つたのです。そして三月五日久代村農業会へ集り文子の方は代理人田外均が来て相談の結果納税は遺産を処分して納めるより外にはないということになりましたがその内田外が腹痛を起したので翌三月六日午前十時庄原税務署で計算して七十三万円ばかりに浪子の分を訂正して浪子名義で届出ました。その時も文子の代理人田外均が来ていましたが届出に際し納税義務者欄に浪子と文子を連署して出しました。文子は唯添判をするという趣旨で納税義務者はあくまで浪子で之は田外も知つています。」

(ハ) 甲第十一号証の二、被上告人の後見監督人岡正人の証人調書中左の記載(二〇〇丁)

「景正の遺産は山林百四、五十町歩其他あり之に対し財産税其他の税金がかかり其の納税について文子の方で浪子に遺産を処分して納税することを一任したという事はあります」

(ニ) 昭和二十三年七月二十八日の証人高坂浪子の調書中左の供述記載(五六丁裏以下)

「財産税を納める事について証人は昭和二十二年三月四日庄原税務署へ遺言により財産管理届をしに瀬尾講太郎、池田弁護士等と行きましたが其の時税務署の方で高坂家の財産税について証人の方からは七十三万円許りに申告をしていたところ文子が後見人として百四十何万円の申告をして居り双方から申告があるので何とかしてくれと言はれたから其の帰途証人は池田弁護士や瀬尾講太郎等と文子方へ寄り座敷へ上らず腰掛で話しました。親族の佐藤天流子、田外均等が居り証人は財産税の申告が不当な額であることを話して財産税のことは証人に任せてくれと云うと田外均が万事御任せすると言い翌五日久代農業会迄行つて相談する約束をして帰りました。

翌五日久代農業会へ行くと田外均も来て居り証人に財産税はどうして納付するかと言うので証人は景正の遺産を処分して納めると言うとそれでは遺産を計算しようと話が決つた頃急に田外が腹痛を起した為め翌六日庄原税務署で計算することになりました。

翌六日税務署の別室で計算すると文子が申告した百四十数万円は全く不法な見積りだつたのでそれを取下げて証人名義で七十三万円余りの申告をしたのであります。

尤も申告書は後見人高坂文子、申告義務者高坂晃正、世帯主証人で納税義務者は証人にしたのであります。文子も証人も連署して出したのですが文子は後見人でありましたから添判をして貰つた訳であります」

(ホ) 昭和二十五年七月十五日の証人高坂浪子の調書中左の供述記載(四四五丁以下)

「これ(甲第十四号証)は庄原税務署の財産税物納許可書であります、財産税の物納については物納地を指定して公租公課を調査して申請するので手数がかかりますが、この明細は私と瀬尾講太郎(久代村収入役、農業会長)が役場に行つて調査し残す土地を定めその余を書いて税務署に提出したのであります。

前述の通り文子が提出した(財産税)申告書は取下げて私が作つた申告書を出すことになつたのですが、その時税務署から物納すればその明細書を明日中提出せよと言はれたが明細書はすぐ出来ないので三日間延期して貰いその帰途駅で田外均は自分は親族会に出席しなければならないので出来ないから私と瀬尾講太郎に任すから作つて出してくれと言はれたので、前述の如く私と瀬尾講太郎が調査して作つたのであります之については文子から苦情や異議を言はれたことはありません

夫景正の死亡後その遺産についての公租公課は全て私が金を都合して納付しているのでありますその上被告(被上告人)の相続税も私が納付しています」

附言

(一) 甲第十四号証(二一一丁)によれば浪子が被上告人のために物納した財産は

田 十九町九反余

畑 七町六反余

合計金十六万余円相当の巨額であつた。此物納について被上告人側が之を問題にしたこともなく、一言異議を唱へたこともない。

本件上告事件の目的物件は山林九町五反一畝十歩上の樹木のみであつて、山林の土地其物は上告人に売渡されたのではない。しかもその代金二十万円は浪子に対して全額封鎖小切手で支払はれて居りそれが財産税納入のためのものであつてそれ以外の何物のためでもなかつたことは明瞭である。原判決によれば上告人は理由なき犠牲を強いられることになる。

(二) 昭和二十五年五月二十七日の証人井藤四郎の調書には左の供述が記載されてゐる。(四三三丁以下)

「浪子は景正の死亡後高坂家に課せられた一般税金及相続税等を納税人の名義はどうあらうとも同人が高坂家の世帯主として全部納付して居りましたし隣保郷党の冠婚葬祭等は一切浪子がやつて居りました。

右は久代村、東城町方面の輿論も承知している状態であります。納付当時高坂家では景正の遺産を処分して納税しなければならかつたのであり……世間一般から見ても浪子が納税資産獲得のため景正の遺産を処分して財産税を納付したことは当然だと思います。」

以上

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例